足立学園中学校

部活・行事等
「体験」が子どもの人生を変える。

四谷進学会 溝田:
足立学園さんの学校行事で驚いたのが、保育園実習や防災キャンプ、海外研修など、本当にたくさんの体験活動です。これだけ体験を重視されているのには、どんな理由があるのでしょうか。
相澤先生:
私たちはよく「心に火をつける作戦」と言っているんですが、その”火種”になるのは、体験です。本やインターネットで知識を得ることはできます。でも、人の優しさに触れたり、自分の無力さを感じたり、「命ってこういうことなんだ」と実感したりするのは、実際に体験しないと分からないことがたくさんあります。だから学校生活そのものが、志を育む体験の場になっています。
四谷進学会 溝田:
特に印象的だったのが、中学生全員が保育園実習に行くというお話でした。男子校では珍しいですよね。
相澤先生:
赤ちゃんや小さな子どもと接する経験は、男の子には少ないと思います。だからこそ、自分より小さな命と向き合う経験をしてほしいと思っています。そのほかにも、農業や畜産体験では牛や羊のお世話をします。そして、その命が私たちの食卓につながっていることも学びます。「いただきます」の意味を、頭ではなく心で理解します。防災キャンプ(高1の行事)では、避難所生活を想定して一晩過ごします。限られた食料をどう分けるか、仲間とどう協力するか。正解のない状況だからこそ、人を思いやる力や、自分で考えて行動する力が育っていきます。
四谷進学会 溝田:
地域との関わりも多いと伺いました。
相澤先生:
本校は、地域の方々の「この街に高等教育の場を」という想いから生まれています。だから今でも地域とのつながりはとても大切にしています。地域のお祭りに参加して、お神輿を担いだり、清掃活動をしたり。地域貢献的な活動も、生徒たちにとって大きな財産です。「地域のために自分も役に立てる。」そんな実感が、自然と育っていきます。
四谷進学会 溝田:
海外研修もとても特徴的ですね。特にタンザニア研修は珍しいと思いました。
相澤先生:
オーストラリアやイギリスも貴重な体験ですが、タンザニアやラオスの開発途上国で実施しているのは、「価値観が揺さぶられる体験」をしてほしいからです。実際に、生徒たちの変化は本当に大きいです。例えば、第1回の研修に参加したある生徒は、緊張からか、現地でも最初はサングラスをかけ、リュックを前に抱え、笑顔がありませんでした。英語も、「正しく文法通り話さなければ」との思い込みのせいか、なかなか言葉が出ませんでした。でも一期一会の体験を重ねていくうちに、「単語だけでも伝わる」「伝えたい気持ちがあれば通じる」ということがわかり、ホテルのスタッフに自分から話しかけたり、現地の方と笑顔で写真を撮ったり…。帰国後には、様々な役に立候補するようになり、学校説明会で司会を務めるほど積極的な生徒へと変わっていきました。本人も帰国後の発表の中で、「自信がついた。」「自己肯定感が高まった。」「コミュニケーション力が伸びた。」と話していました。私たちが教えたわけではありません。体験そのものが、その子を成長させてくれたのです。

四谷進学会 溝田:
そこまでの変化がある生徒さんは珍しいのではないですか。
相澤先生:
これまでそんな生徒を何人も見てきました。現地の病院で自らの財産を投じて医療活動を続ける医師と出会い、「人の命を救いたい」と進路を決めた生徒、帰国後、自らアフリカ支援のボランティア活動を行った生徒、「幸せとは何か」を考え続けた末に、幸せの価値観は人によって違うことに気付き、教員を目指し始めた生徒など。どの生徒も、最初から立派な志を持っていたわけではありません。体験の中で心が動き、誰かとの出会いを通して、「自分もこんな生き方をしたい」と思える瞬間が生まれたのだと思います。
四谷進学会 溝田:
学校行事で「一人ひとりが主役になる機会」が多くあるんですね。
相澤先生:
例えば体育祭では、運動が得意な子だけが活躍するわけではなく、イラストが得意ならクラスTシャツをデザインしたり、写真が得意なら記録をしたり、放送が好きならDJやアナウンスを担当したりなど、自分の得意なことでクラスに貢献できます。だから、「自分には居場所がある」と感じやすいのではないでしょうか。
足立学園を代表する行事の一つに、約30キロを歩く強歩大会があります。最初は「地獄だ!」と悲鳴を上げる中学1年生も少なくありません。でも、その横には必ず先輩がいます。荷物を持ってくれたり、「あと少しだよ」と励ましてくれたり、時には背負ってくれることもあります。助けてもらった後輩は、翌年には助ける側になる。そんな温かな循環が、毎年自然と受け継がれています。高校卒業時の作文に、「一番印象に残っているのは6年前の強歩大会」と書く生徒がいるということからも、この行事が単なる体力づくりではなく、人とのつながりや粘り強さを育てる時間になっていることがわかります。
四谷進学会 溝田:
上下の関係は特に部活動で表れると思いますが…
相澤先生:
今の部活動では、特に文化部は本当に兄弟のような関係です。運動部は多少上下の関係がありますが、昔のような厳しさはありません。部活動もまた、足立学園らしい教育が息づく場所です。強豪の部活動も少なくありませんが、教員が繰り返し問いかけるのは、「何のために頑張るのか」。そのため、勝つことだけが目的ではなく、仲間のため、応援してくれる人のため、支えてくれた恩師のために努力する。そんな思いを持った生徒が多いです。好きだから始めた部活動が、やがて誰かの喜びにつながる活動へと変わっていく。部活動も「志共育」につながっています。


