足立学園中学校

教科指導
「志」が先生たちの合言葉。教科の枠を超えて行われる足立学園の教育

四谷進学会 溝田:
ここまでお話を伺っていると、「志」という言葉が学校全体に浸透していることがよく伝わってきます。でも、それは特別な授業か活動の時だけのお話なのでしょうか。それとも、普段の教科指導の中にも生かされているのでしょうか。
相澤先生:
日々の授業の中でも、自然と「志」を育む関わりをしています。私は国語と書道の教員で、現在は国語の書写を担当しているのですが、「書写の授業」というより、「人生を考える授業」に近いかもしれません(笑)。授業を通して、志を育むきっかけになるような授業を心がけています。
四谷進学会 溝田:
教科を教えるだけではなく、その教科を通して生き方まで考えるんですね。
相澤先生:
授業だけではありません。生徒との何気ない会話も、進路相談も、日常のやり取りも、すべて志共育につながっています。例えば、「どう思う?」「君は本当はどうしたい?」と答えを与えるのではなく、自分で考えを導き出せるようにヒントを与える問いかけや、考えるきっかけを投げかけます。イメージとしては、毎日コーチングやカウンセリングをしているような感覚です。教員の多くは、「志共育」の認定資格を取得しています。研修を受け、生徒の志を引き出すための関わり方を学んでいます。だから先生によって教え方は違っても、目指している方向はみんな同じです。「この子の志を育てるにはどう関わるか」という視点は、全教職員が共有しています。
四谷進学会 溝田:
その考え方は、生活指導の場面でも生かされているのでしょうか。
相澤先生:
もちろんです。中学1年生は、まだ幼さが残っていますから、「文房具を勝手に触られた」
「ちょっかいを出された」そんな小さなトラブルは毎日のようにあります。でも、私たちはそこで頭ごなしに叱ることはしません。まず聞くのは、「なぜそんなことをしたのか?」「君は何のために足立学園へ来たのか?」「それは世のため人のために活躍する人になることにつながるのか?」ということです。
四谷進学会 溝田:
なるほど。「ダメだからやめなさい」ではないんですね。
相澤先生:
入学する生徒は、第一志望だった子もそうでない子も、「足立学園は志共育を大切にしている学校」ということを知って入ってきます。新入生登校日の最初のプログラムも志共育第1回目の授業です。だから生徒たちも、「志」という言葉はよく理解しています。例えば友達を傷つけるような行動があった時には、「それって、志を育む行動かな?」と問いかけます。誰かのために生きる人になりたいと思って入学したはずなのに、その行動は本当にその方向に向かっているのかな、と。すると子どもたちは、自分で考え始めるんです。「確かに違ったな」と。先生が正解を押し付けるのではなく、自分で気づけるように導いていく。それが本校の生活指導です。
四谷進学会 溝田:
志共育の中で、特に印象に残っている授業はありますか。
相澤先生:
「命の授業」は、多くの生徒の心に残る授業です。赤ちゃんが誕生するまでの映像を見て、子どもを授かるまでにどれほど多くの奇跡があるのか、どれだけたくさんの祝福を受けたかを学びます。「みんなは本当に奇跡の存在なんだよ。」そう伝える授業です。思春期ですから、「自分なんて生まれてこなければよかった。」そんな気持ちを抱えている子もいます。お母さんに「クソババア」なんて言ってしまう子もいます。でも授業が終わる頃には、涙を流している子もいます。
四谷進学会 溝田:
それだけ心が動く授業なんですね。
相澤先生:
感想には、「お母さん、ごめんなさい。」「もうあんな言い方はしません。」そんな言葉が並びます。もちろん、一度で完璧に変わるわけではありません。でも、自分がどれだけ大切に育てられてきたのかに気づくきっかけにはなっています。志共育というと、将来の夢や進路の話だと思われるかもしれません。でも、まず「自分の命を大切にすること」「周りへの感謝に気づくこと」が土台です。
四谷進学会 溝田:
教科指導だけではなく、学校生活全体が志共育なんですね。
相澤先生:
そうですね。偉人の志を学ぶ授業もありますし、この大学はどんな理念を掲げているのかという大学の志を知る学びもあります。探究活動(高校のカリキュラム)も、学校行事も、進路指導も、全てが志を育む材料です。子どもたちは、いろいろな人の生き方に触れる中で、「自分はどんな人生を歩みたいのか」を少しずつ考えられるようになります。それが将来の選択肢を広げることにもつながっています。
四谷進学会 溝田:
「志共育」は高校でも同様に行われているのでしょうか。
相澤先生:
はい。中学校3年間で全員が自分の志を見つけられるわけではありません。だから高校から入学してくる生徒も含めて、高校でも「志」を見つける機会をたくさん用意しています。高校から入学した生徒は、まず松下政経塾で「志とは何か」から学ぶ研修を受けます。「世の中をより良くするには」「自分は何のために生きるのか」。そんな学びをする松下政経塾独自の志探究プログラムに参加し、自分なりの志を少しずつ育てていきます。そして進路指導も、偏差値だけでは決めません。「自分の志を実現するためには、どんな大学で学ぶのがいいのか」という視点で、一緒に進路を考えていきます。だから大学受験も、「とりあえず受ける」という生徒はほとんどいないと思います。目指す理由がはっきりしているので、進学後の満足度も高いですね。総合型選抜で進学する生徒も増えていて、高校で取り組んだ探究活動を、そのまま大学でさらに深めていくケースも少なくありません。

四谷進学会 溝田:
卒業生とのつながりも、とても強いそうですね。
相澤先生:
ありがたいことに、多くの卒業生が学校へ戻ってきてくれます。大学生や大学院生になった卒業生が、在校生向けの学習サポートをしてくれているのですが、「アルバイト代はいりません。学校に恩返しがしたいんです」と言ってくれる人もいるほどです。先生が教える以上に、先輩の存在は大きいです。進路相談会でも、自分の経験を後輩に話してくれるので、「数年後の自分」を自然と思い描ける。そんなロールモデルが身近にいることも、足立学園ならではの魅力だと感じています。

