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海城中学校

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代表インタビュー

中田先生インタビュー

四谷:今回は、海城中学高等学校の中田大成先生にお話しを伺います。中田先生、どうぞよろしくお願いいたします。

 

中田先生:よろしくお願いします。

 

四谷:海城が求める教育について、お伺いできますか?

 

 

 

中田先生:本校では、21世紀の新しい時代に活躍するためには、「新しい人間力」と「新しい学力」をバランスよく育成する必要があると考えてきました。新しい人間力とは、コミュニケーションとコラボレーションの能力・他人に対して共感する能力などの社会情動的スキルや、何かに向かって高い意欲をもって取り組む力です。

 

 

我が校では、学校改革における第一期と第二期で、新しい人間力と新しい学力を育ててきました。第三期ではグローバル対応として、高校募集の取りやめや、帰国生の迎え入れ、積極的な海外経験をさせる機会づくりや、海外の大学進学のサポートを実施しました。第三期の後半にはICTインフラの整備を行い、教室に電子黒板機能付きのプロジェクターとホワイトボード、高性能ラインスピーカー、wi-fiルーターを設置することで、ネットワーク環境も整えました。

 

 

ICT支援員も複数雇って生徒たちをサポートしています。ICT ラボと言う先生方が集まり、授業へのICTの活用方法などについて気軽に話し合えるも作りました。

 

 

また2017年から特別講座 KSプロジェクトを始めています。KSプロジェクトとは海城スクールプロジェクトの略で、通常の放課後講習や夏期講習とは異なる講座・講習です。特徴が二つあり、一つは従来のカリキュラムに拘らず、曜日や時間、学年や場所も自由に設定して良いという点です。実施する教員も教科の枠を超え、違う教科の先生方が集まって実施して構いません。そのため、夏休み中に集中して合宿に行ってもいいし、日曜日に外で実施してもいい。この指止まれ方式で、先生方がやりたいテーマについて関心のある生徒たちが集まって行うという形です。

 

 

二つ目の特徴として、内容に関してディープかつオープンであることが求められます。人生90年時代、大学を卒業してから子どもたちは更に70年生き続けます。変化の激しい時代に対応するには、彼らはその間ずっと学び続けなければなりません。興味関心を深掘りするようなディープな学び(原体験)を通じて、生涯にわたって学び続ける学習意欲の調達・供給を行います。

 

 

「オープンイノベーション」という言葉があるように、新しいものや新しい価値は離れたものとものの偶発的な融合によって起こります。それを可能にするのが、開かれたオープンな学びの姿勢です。子供たちにそれを身に付けてももらい、未来を切り開いて行ってもらいたいと我々は考えます。

 

 

 

四谷:新しい人間力育成のためにされている取り組みを教えてください。

 

 

 

中田先生:まず、中1・中2を対象として行っている体験型プログラムが、「PA(プロジェクトアドベンチャー)」です。これはグループで課題に取り組ませることを通してコミュニケーション能力やコラボレーションの力を養うものです。次に中2・中3では、演劇的な手法を用いながら人間関係力や創造性を養う体験学習「DE(ドラマエデュケーション)を実施しています。

 

 

そして、現在はこうした体験学習を行った後、それをきちんと振り返らせ、次につなげていくための教材・プログラムの開発に取り組んでいます

 

 

 

四谷:振り返りはとても大切ですよね。何か具体的な方法があるのですか?

 

 

 

中田先生:文科省は今回の学習指導要領の改訂に伴い、全国すべての小中高生に「キャリアパスポート」を作成させることを指示しています。キャリアパスポートは中長期的に1学期末や学年末で、自分についての振り返りをさせます。振り返りながら新たな学習や生活、将来の生き方を考える活動をホームルーム活動等で行うよう定義されています。この振り返りは、ただ頭の中で思うだけではなく、必ずアウトプットして記録に残さなくてはなりません。まさに人生のパスポートとして、自分の人生の履歴をしっかりと持ちながら生きてほしいということです。

 

 

例えば、まず中1の初めに、将来の夢を叶えるにはどういう力をつけるべきかを考えさせます。1学期が終わったらそれについて振り返りをさせ、一年後にもう少し細かく見ていきます。中2でもまた同じような事をし、中3の終わりには、18歳の私へという形で、将来を見通し、高校を卒業する頃の自分を想像させます。本校では今春から始まったこの学習を「振り返り」を通して自律的・自主的な人間を育成する重要な学習プログラムであると前向きにとらえ、生徒たちに取り組ませています。その際、「振り返り」を大雑把なものではなく、次の成長につながる精緻なものにするには、自己評価の為の然るべき評価表(クライテリア)が必要となります。それを我々は今JAXAの宇宙飛行士養成プログラムの中に求めています。

 

 

 

 

四谷:JAXAと海城とのコラボは意外だと感じますが、何かきっかけがあったのですか?

 

 

 

中田先生:JAXA は宇宙飛行士の訓練や評価に使ったノウハウや方法を、中高大の教育の世界に役立ててもらうプロジェクトを一昨年の秋に立ち上げています。ありがたい事にこのプロジェクトの唯一の実証実験校として、本校が選ばれ、去年一年間実証研究の協力をして来ました。

 

 

JAXAには「精神心理的能力評価表」という、宇宙飛行士の資質・能力を評価する為の極めて精緻な評価表が有ります。これを流用して作成した評価表を用いて、本校では子供たちに振り返り学習をさせています。

 

 

 

四谷:素晴らしい取り組みだと思います。いずれ生徒たちは社会へ出ていくわけですか、次のステージへ進んでいくために必要な能力は何だと考えられますか?

 

 

 

中田先生:大きく3つの領域の資質・能力が考えられます。一つ目は他人・他者とどう関わるかという対他領域の能力。二つ目は自分の好みや性格・能力について自分自身を理解し、マネジメントする対自領域の能力

そして三つ目が周りの環境、世界で生じている問題・課題を解決するための対対象世界領域の能力です。

 

JAXAの評価表では、これら3領域の多様な能力を具体的な行動指標に当てはめて評価できるようになっています。

 

 

 

四谷:海城が求める生徒像を教えてください。

 

 

 

中田先生:これからの時代には主体的・能動的に新たな価値を創造し、他者と協働しつつ自律的に未来を切り開いて行く人材が求められています。

 

 

他方、生育環境の大きな変化等が有り、本校に入学して来る子供たちには依存心が強く、受身の学習や活動しか出来ない生徒が増えています。

 

 

従って六か年掛けて、迎え入れた子供たちを時代の要請する「チェンジメーカー」に育て直すことが我々の最大のミッションになります。

 

 

それを行う上で今教育の世界で注目されているのが、形成的評価としての自己評価であり振り返り学習です。ですので、我々は今その点に力を注いでいるのです。

 

 

勿論振り返りの前にはアクション(活動)が必要です。失敗を恐れずに様々なことに挑戦し、活動する。そしてそれを振り返ることにより気付きを持つ。気付きを得たら、それに基づいてこれまでの自分の行動や学習を修正・自己調整する。それを繰り返しながら自律的に成長していく。それが出来る生徒が我々の求める理想の生徒です。

 

 

 

四谷:この素晴らしい教育を海城だけにとどまらず、国内全体に広めていって頂きたいと感じますが、その方法として何かお考えはありますか?

 

 

中田先生:やはり、我々の成果をしっかり言葉にし、信念を語り続けるしかないと思っています。広報の仕事は、できるだけ外に向けて発信し、海城の教育方針に賛同してくださった御家庭のお子さんをお預かりするというスタンスを強く出しています。メディアでもできるだけ話をして、こういう学校があるんだ、こういうことを実践している学校があるんだということを知ってもらえたらとてもありがたいと考えています。

 

 

 

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